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CEDEC
執筆者:中野 タグ: エンジニア

CEDEC2022を振り返って エンジニアリングセッション編

©HAL Laboratory, Inc. / Nintendo

こんにちは。エキスパートエンジニアの中野です。
先日のサウンドセッション編に続き、今回は CEDEC のエンジニアリングセッションについてお話します。

今年のCEDECでは「『星のカービィ ディスカバリー』 変化し続けるプロジェクトに寄り添ったシステム・ツール開発の紹介 」というタイトルで、私と鶴岡、鈴木の3名で講演しました。
内容としましては、『星のカービィ ディスカバリー』プロジェクトで新規作成・改善を行ったシステム・ツールの中から、「マップエディタ」「ビルドシステム」「スクリーンショット撮影システム」「C#スクリプトシステム」の紹介をする、というものになります。
「具体的な内容をもっと知りたい!」という方は CEDiL で講義資料の pdf を公開していますので、こちらからご覧ください。(CEDiL の会員登録は無料です)

さて、今日はこの講演のテーマについて深掘りしてみます。

今回の講演では「プロジェクトに寄り添う」というテーマを中心に、各事例を紹介しました。
これはシステムやツールだけを見て開発するのではなく、それを使うプロジェクトのことを考えながら開発することが大事だよというものです。

システムやツールの開発について、CEDEC といったお披露目の場では成功例を中心にお話することが多いですが、そこでは取り上げないようなうまくいかなかった事例も実際にはあります。
例えば、ある問題を解決するための機能の要望を受け、作ったあとに納品連絡をしにいったら「もうその問題は別の方法で解決されているよ」と言われてしまって無駄になってしまったなど、そういうことも起きたりします。

これは様々な要因がありますが、例えば「タスクがたくさん積まれているので早く作って次の作業にいかないと!」といった状況で視野が狭まってしまい、実際に使ってもらう人、チーム、プロジェクトの視点が抜けてしまっているときに起きがちだなと個人的には感じています。
そのため、ベテラン開発者でも油断するとうまくいかない事例が簡単に起きてしまいます。

実際のゲーム開発プロジェクトではシステムやツールさえ作ればなんとかなるということはあまりなく、実際に使う人との機能のすりあわせはもちろん、どのタイミングで導入するか、最初に使う人は誰にするか、導入時にどういう説明をするか、導入後にどうフォローし続けるか、といった運用も考え実行することでようやく軌道に乗ることが多いです。

地味だなぁと思われましたか?
でもこれって実は、ゲーム開発と同じなんです。
システムやツール開発では「実際に使う人(チーム・プロジェクト)が気持ちよく開発できるか」、ゲーム開発では「実際に遊ぶ人が気持ちよくプレイできるか」、どちらも「最終的に触る人のことを考えながらもの作りする」という点が一緒なんです。

自分はシステム・ツール開発をしつつゲームの実装もしている人なので、どちらの開発にも通ずるこの考え方はとても大事だと考えています。
そのため、今回の CEDEC ではこの「プロジェクトに寄り添う」というテーマを中心に発信することで、世の中に気持ちよく開発できるスタジオが増え、その結果、気持ちよくプレイできるゲームタイトルでいっぱいになるといいなという想いを込めた講演となりました。
そして私もこの気持ちを忘れず開発を続けていきたいと改めて思いました。

長々と失礼いたしました!
次回は自動装飾セッションの話になります。お楽しみに!