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仕事内容
執筆者:熊崎 タグ: 企画ディレクションゲームデザイナー

『カービィのグルメフェス』の仕事 ゼネラルディレクター編

©HAL Laboratory, Inc. / Nintendo

こんにちは!
『カービィのグルメフェス』、ゼネラルディレクターの熊崎です。

皆さんはもう、ちょっぴり独特な操作感でカービィを転がし、お腹いっぱいにしてあげていますでしょうか?

「星のカービィ」30周年の節目に、『星のカービィ ディスカバリー』に続き、これまで以上にさまざまなユーザーの方に楽しんでいただけるゲームを目指し、この『グルメフェス』は作られました。

どのソフトもですが、それぞれ核となるテーマや役割があり、本作もそれを意識して開発させていただきました。
3D空間で大冒険ができる『ディスカバリー』とはまた違った体験を生み出し、も〜っともっと気軽に、ゲームがそこまで得意ではない、気軽に白熱したい方が楽しめるゲームを生み出す、これが今作での、ゼネラルディレクターとしての私の仕事になります。

チームのリーダーとしての仕事

本作でも企画立案から完成まで導く、チームのリーダー業を担いました。
リーダーを担う、というといつものカービィとあまり変わりはないのですが、新しいゲームであることもあり、はじめに何から試作して、その結果から次に何を目指すのか、毎日決まった時間にメンバーと話し合いました。
これは監修とは違う時間で、ほかのリーダーたちと完成系のイメージを共有するのが目的になります。
その話の中でも、どういったお客さんに届けるものにするのか、は大事な指標にしていました。

本作はカラフルでキュートな世界観で、カービィの愛くるしさもいつも以上のものに見えると思います。
細かな表情やリアクションにも特にこだわりました。
でも、ただ可愛いだけじゃないのがカービィでもあります!
ゲームがはじまれば、思わず声が出てしまう賑やかなパーティゲームであることを感じていただけるかと思います。

指標に合わせてゲーム全体を俯瞰してみる仕事

本作は「初めての操作体験」により、これまでのカービィのアクションに慣れている方も初心者の方も、共に新しいスタートラインからはじめられるゲームです。

その独自性の中で気になったのが、習熟により生まれる「勝敗と順位」でした。
勝ちたい!と願う欲求に応えるのはとても大事なことですが、当然ながら1位がいれば4位の方もいらっしゃって…
熟練者の方にも勝率の面では優位性を残しながらも、そのバランスがゆるく変動するように、本作の役割と指標をもとに、現状を俯瞰して見続けました。

そこで、開発チーム全員で毎日。本当に毎日、対戦の会を開きました。

デバッグを担当する上手なスタッフもプレイしますが、それとは別で、通信テストを兼ねて開発者だけのプレイ会を開催しました。
実は、意外かもしれませんが、開発者にはアクションが得意ではない人も少なくないのです。
開発期間を考えますと、一見もったいない時間に思えるかもしれませんが、その結果、プレイスキルが異なる人同士でもわいわい楽しんでもらえるまで、改善を続けられました。
これは例として、レースなどで上位と引き離されすぎた場合も、一定時間で自動的に次のゲームに進むなど、誰が参加しても滞らずゲームに参加し続けられるような調整に活かされています。

勝敗については、結果画面での敗者の表現についても配慮を行いました。
1位のカービィも3位のカービィもなんだかみんな、おなかいっぱいで嬉しそうです。
さらに4位のカービィも、残念!と悔しがらず、愛らしくおめめをウルウルさせている、そんなリアクションになっています。
悔し涙をわんわん流す表現も試しましたが、最初の指標の「どういったお客さんをメインにしたゲームか」を考えて、この対応にしました。

長く遊んでいただくための要素を考える

やり込みたい方にも楽しんでいただくため、勝敗とは関係なく獲得できるごほうび要素も盛り込みました。

コレクションアイテムでは、初めてカービィを遊ばれる方にシリーズの接点になるようにと、シリーズの要素から選択しています。
またサウンドでは、より多くの方が楽しめるように、最初に聴けるレースBGMは新曲が多くなっております。
ただ後半では、過去のさまざまなカービィシリーズとの出会いの場になるよう、カービィがボールになった懐かしいゲームなどを中心にチョイスしました。
なかにはかなり古いシリーズの楽曲もあり、いろいろとアレンジするのもたいへんでしたが、今作はハル研サウンドチーム総出で楽曲制作に取り組み、バラエティ豊かなサウンドを実現できました。

私の仕事としては、それらの楽曲監修のほか、その曲名やテキスト作成も担当の1つです。
新曲の名前は英語で揃え、いつもと違いを出すため、フェスらしいノリノリなムードを意識しました。
またオンラインのCPU名には、過去シリーズにある言葉をゆるくミックスしたものもひそかに詰め込みました。
ちょっと気になるペンネームのようなものとしてですが、彼らに遭遇すると「おっ」と思っていただけるかも?
手強いラスボスが存在する世界でもないので、全体のテキストのテイストも物語も、ゆる〜くファンシーで不思議な世界観でまとめてあります。

なかでも、誰でも楽しめる一番ゆる〜い遊び心として、「フリーロール」もオンラインで遊べるようにしてあります。
遠くのお友達とゆる〜くボール遊びや早食い競争など、気軽に転がりあえる場にしました。

初めてでも誰1人行き詰まらず、それでも熱い展開が巻き起こる、とっても間口の広いゲームを目指しました。
ふと思い出しては、もう1戦!とついつい遊んでしまうところも、本作の気軽さゆえの特徴に思います。

というわけで、最後にこちらの写真をご覧ください!
テクニカルディレクターの大西(コックオオニシ)が作ってくれた、『カービィのグルメフェス』完成お祝いケーキです!
なんだか甘いものが食べたくなる、素敵な開発現場になりました。

それではこれからも、仲間たちとまた新しい体験のあるゲーム作りにチャレンジしたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました!