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仕事内容
執筆者:藤田 タグ: デザイナーアーティスト

『星のカービィ Wii デラックス』の仕事 アートディレクター編

©HAL Laboratory, Inc. / Nintendo

こんにちは!
『星のカービィ Wii デラックス』のアートディレクターの藤田です。
今回は、ハル研究所のデザイナー、アートディレクターの仕事を紹介します。

デザイナー/アーティストの仕事

まずデザインやゲームアートを制作する仕事には、「キャラクターアーティスト」「エフェクトアーティスト」「キャラクターモーション」「フィールドアーティスト」「UIアーティスト」「アートワーク」といったセクションがあります。
各セクションの仕事内容を簡単に説明します。

「キャラクターアーティスト」はキャラクターやギミックのデザインを考えてモデルを作成する仕事です。
デザイン、モデル作成は分業することが多いですが、デザインからモデリング、アニメーションやエフェクトまで1人のアーティストが対応することもあります。

「エフェクトアーティスト」はキャラクターが走るときに出る煙や、敵に攻撃が当たったときに出るエフェクトを作成します。
キャラクターのエフェクト以外にも、フィールドに置かれた火山の煙なども作成します。
エフェクトは専用のツールで作成するのですが、テクスチャを作ったり、3Dモデルを作ったりと仕事の幅は広いです。

「キャラクターモーション」はキャラクターにアニメーションをつける仕事です。
キャラクターアーティストが作成したモデルを使って、仕様や、世界観にあわせてアニメーションをつけます。

「フィールドアーティスト」は背景デザインを考えて、背景モデルを作成し、ゲームデザイナーが作ったフィールドに背景モデルを配置します。

「UIアーティスト」はゲームのタイトル画面やポーズ画面、体力ゲージなどを作成します。
他にもロゴを作成したり、世界観にあったフォントを選んだり、海外の言語に翻訳されたときに違和感のないように文字やデザインを調整したりするのも仕事です。

「アートワーク」はゲームのパッケージデザインや、ゲームの世界観を反映した広報素材を作る仕事です。

アートディレクターは何をする?

アートディレクターの仕事は監修やデザイナーのタスク管理などいろいろありますが、1番大きいのは、ゲーム全体のアートの方向性を決める、という部分ですね。
『星のカービィ Wii デラックス』では、どのようにアートの方向性が決まったのかを紹介します。

『星のカービィ Wii デラックス』は、約11年前に発売された『星のカービィ Wii』のリメイク作となります。
まずはゼネラルディレクターやディレクターとミーティングを行い、今作のアートの方向性は、『星のカービィ Wii』のグラフィックスを美しく進化させる、としました。

方向性は決まったけど、どう美しく進化させようか……?
文章を書いたり、参考画像を集めたりしましたが、どうもしっくりこない感じです。
「よし、ひとまず作ってみよう!」ということでグラフィックスの試作品を作成していくことにしました。

まずは背景の木や岩といったオブジェクトのディテールを増やして表現を豊かにし、また配置する数も増やしました。
さらにライティングも調整して、影が落ちるようにしたら、環境光がリッチになりました。
「うん、背景がきれいになると、やっぱり進化しているように感じられる!」と喜んでいたのですが、「あれ……?もとの『星のカービィ Wii』よりも、キャラクターが見えにくくなっている……?」。
そうなのです、背景が豪華になると、キャラクターが背景に埋もれてしまい、目立たなくなってしまったのです。
そこで、キャラクターが見やすくなるよう、背景の色を調整してみたのですが、感想としては「悪くはないんだけど、背景の美しさが減ったように感じられなくもないような……?」。

次にキャラクターの色を派手にすることで、キャラクターを見やすくしてはどうかと思い、こちらも試作しました。
『星のカービィ Wii』の印象から離れないようにちょっとずつ派手にしていくのですが、あまり派手にしすぎると印象が離れてしまう、でも派手にしないと背景の方が目立ってしまい……。その塩梅がむずかしい!
苦労の割に、試作を見た感想は「キャラクターが見やすいような、なくもないような……?」

どうしたものかと悩み、別のアプローチとして、アウトラインとフラットなToonライティングを試してみることにしました。
キャラクターをフラットなToonライティングにし、アウトラインをつけることでキャラクターが目立つのではないかというのが理由でした。
「これは……!すごく良いのではないか……!?」

手応えを感じつつも、フラットなToonライティングではキャラクターの印象が変わりすぎたようにも感じました。
そこで、大きく印象が変わらないように、ToonライティングとPBRライティングを組み合わせた半Toonの表現にすることにしました。

この3つの試作をもってゼネラルディレクター、ディレクターと相談し、今回のアートはアウトラインと半Toonの表現とすることに決定しました!
さて開発が進むと……と、まだまだお話したいのですが、今回はこのへんで。

アートディレクターの仕事のほんの一部を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
アートディレクターというのは、たくさんの経験や高いスキルがないと務まらないというイメージがあるかもしれません。
そういった部分も確かにあると思いますが、今回のような大規模なゲーム開発では、一人で全部のアートディレクションを担当するのではなく、自分の不得意な分野はそれが得意な別のデザイナーにまかせ、みんなで協力しながら開発を進めていく、ということも大切になってきます。
例えば『星のカービィ Wii デラックス』では、UIデザインの方向性や監修はUIアートディレクターにまかせています。

©HAL Laboratory, Inc. / Nintendo

デザイナー/アートディレクターを目指す方へ

上でも紹介したように、ハル研究所では、みんなが自分の得意を活かし、チームで協力してゲーム開発を進めていきます。
ですので、デザイナーやアートディレクターを目指す方には、まずは自分の得意分野をゆっくりでいいので伸ばしていってほしいなと思います。
友達や仕事の仲間に「〇〇さんはこの分野が得意だから相談しよう」と頼ってもらえるようになったら、もう一人前ですね。
自信をもって「自分の得意分野はこれです!」とアピールしていいと思います。
そして、また次の得意分野を見つけて……を繰り返していくと、仲間に頼られるデザイナー/アートディレクターになれるのかなと思っています。

今回のブログで少しでもハル研のデザイナー/アートディレクターの仕事に興味を持っていただけたなら嬉しいです。
今後もハル研のたくさんの仲間とおどろき、たのしさ、あたたかさが詰まったゲームを作っていきたいと思います!