ハル研ブログ BLOG

仕事内容
執筆者:渡辺 タグ: ディレクターゲームデザイナー

『星のカービィ Wii デラックス』の仕事 ディレクター編

©HAL Laboratory, Inc. / Nintendo

Nintendo Switchソフト『星のカービィ Wii デラックス』、ディレクターの渡辺です。

2011年に発売された『星のカービィWii』がデラックスに生まれ変わった『星のカービィ Wii デラックス』!
ついに、本日発売されました!!

「星のカービィ」シリーズ30周年を締めくくる作品として発売を迎えることができ、大変嬉しく思っております。

さて、この記事では『星のカービィ Wii デラックス』におけるディレクターの仕事内容を、ほんの一部ですがご紹介していきます。
ゲームクリエイターを目指している方の参考になれば幸いです。

「ディレクター」は、ゲームの売りとなる要素の検討、ゲーム全体構成の検討、仕様作成、実装するものの優先度決め、ゲーム全体の監修を行うなど…仕事内容は多岐にわたります。
端的に表すならば「面白いゲームを完成させる責任を持ち、そのためにいろいろやる!」のが主な仕事です。
と言っても、イメージしにくいかと思いますので、『星のカービィ Wii デラックス』で行った仕事を軽くご紹介します。

「デラックス」にするための、ゲーム全体構成検討

『星のカービィ Wii デラックス』は、文字通り「デラックス」な作品を目指して開発しましたので、ゼネラルディレクターの熊崎とすり合わせながら、より「デラックス」にするための企画・構成・仕様を作り上げていきました。

もっとわいわい楽しめるように!

もともと『星のカービィWii』は、「いつでもイン」で家族や友達がいつでも冒険に参加し、わいわい遊ぶことができるゲームです。
今作は、もっとわいわい遊べるようなものにしたい!と考え、最大4人で遊べるサブゲームを詰め込んだ、マホロアのテーマパーク「わいわいマホロアランド」を作りました。
歴代のカービィシリーズからサブゲームを1つずつピックアップして4人で遊べるようにリファインしたり、みんなで好きなキャラクターになりきってワイワイできる「なりきりおめん」をご褒美でもらえるようにしたり…
昔からカービィを遊んでくださっている方も、これから新しく遊ぶ方も、みんなでわいわい楽しんでもらえるようなテーマパークを目指しました。

©HAL Laboratory, Inc. / Nintendo
星のカービィWiiを遊んだことがある方にも、驚きを届けたい!

そんな思いから、新モードの「マホロアエピローグ」を入れました。
原作である『星のカービィWii』を遊んだことがある方は、ストーリーのラストシーンを覚えていますか?
「あの後、マホロアはどうなったのか…」
マホロアエピローグでは、その後の物語を描くことにしました。
遊びの面でも「キャラクター強化」という新要素を入れ、物語/ゲームシステムの両方で新しい体験ができるようにしています。
もちろん、『星のカービィWii』を遊んだことがない方にも楽しんでもらえるよう、本作だけでもお話が分かるようになっています!

もっと、間口を広げたい!

「星のカービィ」シリーズは「誰でも遊べる間口が広いゲーム」を目指していますが、今回はさらに間口を広げたいと考え、アクションゲームが苦手な方でもクリアできるような「おたすけマホロア」というアシスト機能を入れました。
クリアまでに躓きそうなポイントを分析し、それぞれに対してアシスト機能が働くようにしています。
また、単なるアシスト機能ではなく「マホロアが助けてくれる」という点にもこだわりました。
例えばステージの穴に落ちたら…マホロアが引っ張り上げてくれます!
ぜひ、一生懸命助けてくれるマホロアと共に冒険してみてください。

©HAL Laboratory, Inc. / Nintendo
プレイヤー挙動をさらに気持ちよくしたい!

実は、プレイヤー挙動も全体的にブラッシュアップしています。
移動速度が上がっていたり、ジャンプしやすくなっていたり、ワザが増えていたり…。
『星のカービィWii』の良さを残しつつ、さらに快適になるようチューニングしました。

他にも「新コピー能力/新チャレンジステージの追加」「サウンドルームで曲名が分かるようにした」など…全ては語り切れませんが、様々な部分で新しい要素を入れ「デラックス」を追求していきました。

全体の監修

大規模なゲームになってくると、ディレクターがすべての作業監修を直接受け持つことが難しくなってきます。
そのため、セクションごとに監修担当を設けています。

例えば「わいわいマホロアランド」はセクションディレクターの谷藤が受け持ち、その中の10種類の「サブゲーム」は、複数人のゲームデザイナーたちがそれぞれ受け持っています。
それらを俯瞰して、全体を見ながら監修するのもディレクターの仕事です。

その例として…
このゲームは、ストーリーモードで冒険している途中に、いつでもマホロアランドと行き来することができます。
しかし、「行き来する動機」がないと、思うように遊んでもらえません。
それを解決するために、マホロアランドでのプレイがストーリーモードの冒険に干渉するような仕組み…具体的には、マホロアランドで遊ぶと「なりきりおめん」や「おみやげアイテム」といった冒険に使えるアイテムが手に入るようになっています。
私はこれらの要素が「ゲーム全体で見た時に、適切な仕様/バランスになっているか」を監修し、セクションディレクターやゲームデザイナーと協力して「行き来したくなるゲームサイクル」を作り上げていきました。

以上、私がディレクターとして行った仕事の、ほんの一部をご紹介しました。

ディレクターへの道

最後に、私がディレクターになるまでの道のりを、一例としてお話しします。

私は「ゲームを作りたい」という思いを持って、プログラマーとして入社しました。
ハル研の開発スタイルでは、プログラマーがゲームのアイディアを提案することもできますが、最終的に仕様を決め、面白さの責任を持つのはゲームデザイナー/ディレクターの役割。
私が本当にやりたかったのはその役割だと再認識した頃、ちょうど社内で、レベルデザイナー育成の話が挙がりました。(レベルデザイナーとは、ゲームデザイナーが担当する仕事のひとつです)
それを受け、プログラマーからレベルデザイナー(ゲームデザイナー)へジョブチェンジ!
後のプロジェクトでレベルデザインディレクターを経験し、そして今作でディレクターを担当することになりました。

ディレクターになるには、ゲームクリエイターとしての経験を積み重ねること、さらに「やり遂げる!」という熱意と覚悟も重要だと考えています。

あくまで一例ですが、将来ディレクターになりたいと考えている方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました!