ハル研ブログ BLOG

仕事内容
執筆者:下岡 タグ: サウンドクリエイター

『星のカービィ ディスカバリー』の仕事 サウンド編

© HAL Laboratory, Inc. / Nintendo

こんにちは。サウンドの下岡です。
ハル研ブログへの登場は、サウンドクリエイターの新人研修をお伝えした時以来となります!

今回のブログでは、『星のカービィ ディスカバリー』の開発を通して、サウンドの仕事であるBGM作曲と効果音制作について紹介させていただきます。

①BGM作曲

ゲームではステージやデモシーン、ボスとの戦いなど、様々な場面でBGMが必要になります。

まずは各場面について、ディレクターにどういう曲調がゲームに合うかを取材します。
そしてさらにその取材で得られた情報をもとに、音楽で表現する情景はどういうものか、どういう楽曲にすればよいか…ということをサウンドでもイメージを膨らませていきます。

例えば、水流に乗って探検するダムのステージ「地下水道に流されて」のBGMを考えた時は、
「ダンジョンだけど地味になりすぎないよう、印象に残るメロディーが必要な構成になりそうだな」
「カービィが水流に乗っている時の、ひんやりと気持ち良い感覚をメロディーや音色で表現できないかな」
月夜に照らされた峡谷面のステージ「ムーンライトキャニオン」のBGMを考えた時は、
「峡谷の壮観な景色、頬に吹く風や、標高の高い地形を音にするとしたらどうなるかな」
「カービィが探検している時に、鼻歌を歌うとしたらどんな曲かな」
などと、いろいろ視点や考えを巡らせて「ゲームのステージやストーリーにふさわしい楽曲はどういう目的や音楽的要素を持っているものか」を自分の中でも明確にします。

そのうえでシンセサイザーを弾いたり、鼻歌を歌ったりしながらメロディーについて考え、良いと思えるものを閃いたら、さらにそれを推敲して実際に使用するメロディーへとブラッシュアップさせます。
ちなみに、散歩中やお風呂に入っている時のふとした鼻歌からメロディーを思いつくこともあります。

メロディーを思いついたら次は、楽器の割り当て、強弱や奏法などの演奏表現をどうしていくかを考えるアレンジの作業をします。

私はアレンジをする時に
●そのメロディーが一番輝くためには何をしたら良いか
●表現したい内容が他の人にも伝わるにはどのように伝えたら良いか
を考えるようにしています。

自分でうんと考えたうえで楽曲として形になったら、サウンドの先輩方やディレクターにチェックを依頼します。
そして自分の視点では見落としてしまっていたポイントや、聞いた人がより魅力的に感じられるように調整が必要なポイントを教えていただき、それを実現できるように作曲やアレンジを見直していきます。

自分が一度「完成した!」と思える段階まで作ったはずの楽曲でも、実はまだまだ良くできるポイントはたくさんあります。
一つ一つ調整していく作業は大変ですが、乗り越えるたびに楽曲がさらに良くなっていくことが面白く、最終的に自分でも納得できる楽曲にまで仕上げられた時には、大きな達成感を得られます。

© HAL Laboratory, Inc. / Nintendo
②効果音制作

敵が爆弾を投げる時や、決定ボタンを押す時など……あらゆるゲームの操作や状況で、効果音が鳴っています。
その一つ一つはゲームを遊んでいる人に、
●「敵キャラクターが攻撃をしてきた」「決定ボタンを押した」などの状況
●「ボスが強い攻撃をしてきた」などの場面の迫力
●「自分の攻撃が当たった」などの手ごたえや爽快感
などを伝えて快適に、楽しくプレイしてもらうことを目的に作っています。

効果音と聞くと「ピコーン!」というような、シンセサイザーで作るような電子的な音での作り方をイメージされるかもしれませんが、それだけではなく、実は身の回りにあるものの様々な音を加工して作ったりもしています。

例えば、ボスキャラクターが檻に閉じ込めたカービィを揺さぶる攻撃の音は、金属製のかごの中に鎖やクッキーの型などの小物を入れて、じゃらじゃらと揺らした音をもとに作っています。

また、人の声も効果音の素材とすることができます。
一部のボスの叫び声や、敵キャラクターが仲間を呼ぶ遠吠えの効果音は、サウンドスタッフの声をもとに、ピッチ(音の高さ)を変更したり、エフェクトをかけたりして作っています。
効果音制作はBGMの作曲に比べると一見地味に思える仕事かもしれませんが、実際には目的に合った音を作るためにいろいろなアプローチを考えたり試行錯誤したりする作業は、作曲で感じる楽しさと近いものがあります。
さらに効果音はゲーム体験の気持ちよさや遊びやすさに直接かかわる仕事なので、BGMとは違う楽しさがあります。

BGMと効果音、そのどちらについても、音のイメージが思うように湧かない時、イメージはあるのにそれをなかなかうまく実現できない時はすごく悩みます。
しかし、そうした過程を経て出した答えが、BGMや効果音として形になり、サウンドがゲームと結びついて生まれた体験を皆さんに届けられた時には、この仕事最大のやりがいを感じます。

ここまでほんの少しではありますが、サウンド制作の仕事を紹介しました。
何か皆さんにとって発見となるものはあったでしょうか?
『星のカービィ ディスカバリー』の世界を探検する際には、ゲームの世界や体験を盛り上げるBGMにも耳を傾けたり、さらに音に興味がある人は、このBGMはどういうことを表現しているのかな、この効果音はどうやって作られているのかなと考えてみたりして、音の面からもゲームを楽しみつくしていただけたら嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました!

『星のカービィ ディスカバリー』公式サイト