ハル研ブログ BLOG

仕事内容
執筆者:村木 タグ: デザイナーアーティスト

『スターリーワールド』の仕事 アートディレクター編

『星のカービィ ディスカバリー Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド』メインビジュアル

こんにちは!
Nintendo Switch™ 2 ソフト『星のカービィ ディスカバリー Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド』のアートディレクターを担当した村木です。
いよいよ本日発売となりました!
今回はちょっとだけ『スターリーワールド』におけるアートディレクションの仕事を紹介させていただきます!

アートディレクターの仕事

アートディレクターは、ゲーム全体のグラフィックやアートの方向性を決めたり、タスク管理や監修をしたりして、より良い作品になるよう導く仕事です。

今作は2022年発売のNintendo Switchソフト『星のカービィ ディスカバリー』からグラフィックやフレームレートを向上させ、さらに新ストーリー「スターリーワールド」を追加した作品となります。

こちらはゲーム中の画面写真ですが、今作の世界がよく表れている1枚となります。

『星のカービィ ディスカバリー Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド』ゲーム画面

「ディスカバリー」でおなじみの草原に建つビルに大きな流星の結晶が落下して、まるで半分が別の世界のようになっていますね!
今回はこのビジュアルにたどりつくまでに、どんなことを考えたかをお話ししたいと思います。

まず、アートディレクターとして考える必要があったのは、≪新しいゲーム機としてのグラフィック≫と≪流星をテーマとしたメインビジュアル≫です。

流星がテーマということは決まっていたので、まずは流星が落ちてきた新世界がどのようなビジュアルになるかを考えていきました。
どんな流星にしようかな?
これまでのカービィとは違って、今作の流星はもっと鉱物のような形にしたいな…。
ただそれだけだとカービィの世界には少しリアルすぎる?
などなど、いろいろと模索した結果、形は「金平糖」をイメージとすることにしました。

金平糖?何を言っているんだこの人は、と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、「星のカービィ」シリーズのフィールドには、おいしそうなお菓子やチーズのような自然物がたくさんあるんですよ。
あくまでイメージですので、本当の金平糖が流星として降ってくるのではなく、コロコロとした尖りすぎていないあの可愛いフォルムや、淡く少し透明感があるような色合いなどを、要素として取り入れています。

では、その流星が落ちてきた新世界はどのような見た目に変貌するのか…。
フィールドに関わることはゲーム全体のイメージやステージ構築に密接に関わるため、ディレクターのやりたいことやどのような遊びにしたいのかをしっかり聞き取り、話し合いながらイメージを膨らませていきました。

今作では「これまでは行けなかったところに行ける」というのがステージ構成のコンセプトにありました。
行けなかったところに行けるということは、前に「ディスカバリー」で遊んだことがあれば「あの場所だ!」と思ってくれることが大切になります。

始めは、たくさんの流星(金平糖)が降り積もって、根を張って浸食していったようなイメージのアートを考えていましたが、きれいで可愛くなりそうだけれど、流星に覆われすぎていて元のステージの懐かしさが損なわれてしまいました。
新たな道も、落ちてきた流星がただ刺さるだけだと物理的な印象で美しさや驚き、ワクワクはないな…と。

そんなとき、≪新しいゲーム機としてのグラフィック≫として「動的に変化する」ということができないかという案が出てきました。
動的に変化する…、ということは?最初から全体が流星に覆われているのではなく、ステージを遊んでいるときに流星の力で周囲が変貌して、流星の空間が広がるように道が現れれば幻想的だし、驚きもあってワクワクする。それならば全てが流星に覆われることもなく、半分は「ディスカバリー」の新世界のビジュアルが残っているし懐かしさもある…。
「これだ!!」となりました。

そこから、流星の空間ってどんな感じ?地面や空も変化するの?流星の道はどう出てくるの?空間を行き来するときはどうなるの?どんな技術や表現を使うの?などなど、細かい部分も考えていき、それらをゲームグラフィックに落とし込むと、ようやく冒頭のメインビジュアルの完成です!

こう聞くと、アートディレクターは一人でいろいろ考えないといけないんだなと感じたかもしれません。
もちろん考えることはたくさんありますが、アイディアはチーム総出で考えますし、各セクションのプロフェッショナルな仲間たちがガンガン形にしていってくれます。

アートディレクターとしての一番の仕事は「これでいこう!」と数あるアイディアのなかから決めて、もっと魅力的に見えるように監修をして調整することにあるのではないかと思います。
中には自分の経験が浅く、知識が足りなかったり不得意だったりする部分も存在します。
そういった部分は詳しい人に聞いたり、得意な人に任せたりします。
「得意な人に任せる」というのも先ほどお話しした「これでいこう!」と決めることのひとつですね。
そうして、ひとりひとりが得意な部分を生かして、少しでも多くのワクワクを届けられるよう開発は進んでいきます。

できればもっとお話ししたいところですが、長くなりそうですのでそろそろこのへんにしておきますね。

まとめ

アートディレクターとしての仕事を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
アーティストやアートディレクターを目指す方は「考える」ということが好きな人が多いのではないでしょうか。
個人制作では、自分で考えて決めて作品を完成させますが、会社ではまたそれとは少し違っていて、まわりにはいろんな考えや技術があって、アイディアが溢れています。
自分では考えつかなかったすごいアイディアもあったり、自分一人では作ることができないモノを多くの仲間と作ることができたりするのが、チーム開発ならではの楽しさだなと思います。

そしてそのたくさんのアイディアから選んで決められるというのは、アートディレクターとしてとても贅沢なことだと、今回担当してみて思いました。
もちろんそれに見合った責任もありましたが、まわりの人たちの支えもあり、とても楽しい仕事となりました。

今回のブログを通して、「アートディレクター」の仕事に興味を持っていただけたなら嬉しいです。
今後もいろんな知識や技術を吸収して、多くの方にワクワクした体験をお届けできるよう
精進してまいりますので、これからもよろしくお願いいたします!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

『星のカービィ ディスカバリー Nintendo Switch 2 Edition + スターリーワールド』公式ウェブサイト

© HAL Laboratory, Inc. / Nintendo
Nintendo Switchは任天堂の商標です。