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仕事内容
執筆者:熊崎 タグ: ディレクターゲームデザイナー

『星のカービィ Wii デラックス』の仕事 ゼネラルディレクター編

©HAL Laboratory, Inc. / Nintendo

こんにちは!
『星のカービィ Wii デラックス』、ゼネラルディレクターの熊崎です。

本作のベースとなる『星のカービィ Wii』では、当時ディレクターを担当していました。
その『星のカービィ Wii』は、実に11年ぶりの据え置き機で遊べる本編のカービィでした。
『星のカービィ64』の後に据え置き型ゲーム機向けに「カービィ」の開発が始まりましたが、中止され発売できなかった3作がありました。
11年試行錯誤をして『星のカービィ Wii』が生まれ、それからさらに11年が経ち 、『星のカービィ Wii デラックス』が発売となりました。
とても長い年月だったことをあらためて実感します。

全ての環境を活かし、チームを動かす

その長い年月の中で、モノづくりの環境にも変化もありました。
原作『星のカービィ Wii』の企画は、私と、2名の若いゲームデザイナーとの小さな企画チームで開発しました。
その1つ前のカービィシリーズの開発では企画職は私1名でしたので、チームワークと言えばデザイナーやプログラマー、サウンド担当と行うような形でした。懐かしい思い出です。
今では同時に監修するプロジェクトも増え、カービィシリーズ全体のゼネラルディレクターとして、企画チームとチーム全体を統括して開発しております。

私は、新しく変わりゆくテクノロジーが「チームにハマる瞬間」が大好きです。
やっぱり便利が一番ですから。
例えば今のコミュニケーションツールですが、メールはもちろん、社内サイトやチャット、Web会議システムも導入し、多くのメンバーとのコミュニケーションが円滑になりました。

今作でも日々、それらを使って日報のように情報発信を続けました。
それでもデジタルでは伝わらない、クリエイターたちの顔、目の動き、声の些細な変化など、会って話を聞かないとわからないこともしばしば。
環境は進歩しましたが2023年現在ではまだ、モニター越しでは届かない「何か」があります。
将来はテクノロジーで克服できることだと思っていますが。

と、いうわけで、本作のディレクターを担当する渡辺には、私の隣の席に移動してもらいました。
「星のカービィ」30周年には、ゲーム3作品が開発されましたが、その都度、私の隣の席にはリーダー達が移動してくれました。

開発期間中、ディレクターたちとはとてもよく話します。
打ち合わせの時間を作って会議室を予約して…の、その前に!
迷ったら話す、思ったらすぐ伝える!
ディレクターたちがやりたいことを最大化するためにも、早くジャッジをするためにも、この距離感はとても活かされました。スピーディ!

また、1つのタイトルだけに時間を投じては全体がうまく回りません。
ゼネラルディレクターとして個々のディレクターだけでなくチーム全体の進捗を見て、ソフトのクオリティを落とさないよう、プロジェクトを越えて必要な場所に力をいれる、適材適所も意識しました。

そう言うとなんだかカッコいいのですが…環境を活かし、よく見てよく話し、すぐ動く!
シンプルですが大事なことだと思っています。

©HAL Laboratory, Inc. / Nintendo

ディレクションだけじゃなくなんでも

ゲームの企画を立ち上げると、はじめにディレクターとよく話し、作るべきものを考えます。
その後は挙動やデザインなど全体の監修業が多くなるのですが、同時にゼネラルディレクターとしてではなく、私が専任で担当する部分もあります。

1つはゲーム内のテキスト。
ポーズ画面のテキストや楽曲の名称などの執筆を担当します。原作からの追加セリフなどもですね。
ディレクターと相談し、設定に関わる固有名詞や敵の技名など、文字になるもの全般を執筆します。
30周年に発売された3作ともテキスト担当だったため、仕事が重なると大変でしたが、メンバーに見せて納得してもらえると嬉しくて頑張れました。

もう1つはサウンド。
実際に音を作るのはサウンドクリエイターの仕事になります。
私はボイス収録のほか、BGMの発注を担います。
自分で発声するデデデ大王の声撮りなど、変わった仕事もありますが…多くは楽曲に関わります。
まず、「この場面でこう感じさせるための曲が欲しい」とサウンドチームに発注します。
大枠の曲ジャンルの指定、時には音色やメロディ案を伝え、入れて欲しいフレーズもここでオーダーし、完成までとことん監修します。

BGMの目的は楽曲を通じて、その世界ならではの体験を楽しんでもらうこと。
スタッフから心動かされる曲が届くと、1日中聴くのも20年ほど前から変わっていません。
ほかの仕事中も耳は空いていますので!

また音のリマスター方針も決めます。
原作を尊重し音源はそのままに、音質の強化を目指しますが、それはデータを高品質にする…だけではありません!
新作の曲と並んでも自然なように、本作の協力会社であるバンプールさんに調整してもらい、ほんのりとコーラスやギターの音を足してもらっていたりもします。
中にはボス戦で鳴るコーラスや音声の部分は、リードミュージックの安藤に「もっと心に響くものに」と発注し、大きな変化を出してもらうなど曲ごとに異なります。
アクションはもちろん、音楽や文字などあらゆる要素でその世界ならではの体験を楽しんでいただくことにこだわります。

おわりに

ご紹介させていただいたのは私の仕事の一部です。
このほか、テストプレイや広報業務、プレゼンや打ち合わせなど幅広く行っています。
ゼネラルディレクターとはこう!というものはなく、全体を見て、決断し、人と話し、まず動く!
ゲームをより良いものに仕上げるべく、チームを盛り上げ完成まで導くのが仕事です。

そして、最後にソフトが完成するとあることをします。
それはスタッフクレジットを眺め、1人1人の担当を振り返ることです。
最近はプロジェクトメンバーも増え、各チームのリーダーが見てくれているので彼らからそれぞれのメンバーの活躍を聞いているのですが、最後にあらためて仲間たちのクリエイティブの活躍を振り返る、好きな時間です。

これからもこの写真の仲間たちと共に、より良いゲームを作っていこうと思います!
お読みいただき、ありがとうございました。