開発ストーリー

実録!『ハコボーイ!』プロジェクト

新しいゲームが生まれるまでの流れを実際のプロジェクトでご紹介します。

1.新しいゲーム企画を募集します!

ハル研究所ではいつでも誰でも企画を出して良いが、プロジェクトの区切りがついたときなどに、新しいゲーム企画の募集が行われることがある。
入社7年目のムカエは、これまでゲームビジュアルデザイナーとしてキャラクターやギミックなどのアイディアを提案してきたが、ゲーム全体の企画を考えた経験はまだない。この機会に、まったく新しいキャラクターのゲームの企画を考えてみることにした。

2.どんな企画にしよう?

ムカエはパズルゲームを企画することにした。古今のパズルゲームの研究やこれまでの経験からおもしろさを突き詰めていくうちに、だんだんと自分が作りたいゲームの形が見えてくる。単なるパズルではなく、アクションの要素も入れたい。キャラクターやステージはできるだけシンプルに・・・こうして、ハコ型のキャラクターが自らハコを出してパズルを解いていく、という企画がまとまった。

企画書。
このゲームの遊びの原型、特長やルールが、一目で読み手に伝わることが求められる。

3.ちょっと動かしてみよう!

ムカエは、この企画書を応募するのと同時に、隣の席のプログラマーにも見てもらった。開発経験が豊富なこのプログラマーがどんな反応をするのか、ドキドキしながら待っていると・・・「これおもしろいから、動かしてみましょうよ!」の一言。これは願ってもない展開だ!すぐに制作に取りかかり、ふたりで1週間ほどかけて、1ステージだけのプロトタイプが完成した。

プロトタイプでは、ゲームにしたときに企画書で狙った通りのおもしろさになっているのかを確認。

4.緊張のプレゼンテーション

企画応募から数週間後。ムカエは、企画会議で初めてのプレゼンテーションに臨んだ。経営陣を前にし、緊張を抑えながらゲームのウリを説明していくムカエに、次々と質問が飛ぶ。
「どうしてパズルゲームにしたの?」
「この世界観は思い切ったね!狙いは?」
「どんな展開にしようと思っている?」
ムカエは夢中で質問に答えていった。用意したプロトタイプのおかげで、遊びのイメージも上手く伝わり、なかなかの好感触。これは、もしかして・・・?

5.「まずは実験プロジェクトとして始めてください」

数日後、うれしい結果が伝えられると、すぐにメンバー選考が始まった。
ハル研究所では企画を考えた人がディレクターを務めるため、ゲームのおもしろさに責任を持つディレクターはムカエに決定。その他のメンバーとして、プロジェクトの舵取り役のプロジェクトマネージャー、続いてデザイナー、プログラマーの配属が決まり、8人で実験プロジェクトがスタートした。

6.アイディアを出し合おう!

ムカエからゲームの企画、仕様について説明を受けたメンバーは、それぞれの職種の視点から、仕様をどう実現するかを検討し、さらにゲームの遊びを膨らませるアイディアを考えていく。
ホワイトボードにマップを描いては、議論を交わし、また新しいアイディアを出し合う日々が続いた。

アイディアを持ち合い、意見交換を行うミーティングでは、職種の違いも、先輩後輩も関係なく、遠慮無しでどんどん発言することが求められる。

7.どうする?主人公キャラクターのデザイン

企画書では、主人公キャラクター『ハコボーイ』は、モノクロでハコに目と足がついただけのデザイン。ムカエは「あくまで仮」と言うが、キャラクターデザインを任されたイトウは、むしろこのシンプルさを活かしたいと考えていた。ただ、もうひと味欲しい。線の太さやカタチの調整、モノクロかカラーか・・・いろいろ試すなかで、イトウが特に力をいれたのは “足”。わずか数ドットで描かれた足に、きめ細やかなアニメーションをつけると、「トットットッ」「シャキーン」「ズンッズンッ」と擬音が聞こえてくるような、何とも言えないコミカルな個性が加わった。

8.くねくね道に入り込む・・・

基本の遊びができあがったところで、自信を持って臨んだ中間プレゼンテーション。
しかし、経営陣の反応はイマイチ・・・。
「遊びも、デザインも、シンプルすぎるのではないか?」
「カラーにするなど、違う方向でも一度検討してみて」
などの意見が出て、キャラクターや世界観、ターゲット層など、様々な角度から企画の見直しを行うことになった。方向の違うアイディアを盛り込んではプロトタイプを作ってみる、という日々が続く。

3D、カラフル、コラージュなど、様々な案を試作した。

9.ぐるりと回って、大きく前進!

数々のプロトタイプを検討し、「やはりこのゲームはモノクロでシンプルがベスト」と、ムカエをはじめ、メンバーは確信した。最初と同じ答えだけど、その重みはまったく違う。遠回りにも思えたが、みんなで様々な方向を考え尽くすことができたからこその結論だった。
この経緯をずっと見守ってきた経営陣は、チームが出した答えに確かな手応えを感じた。すぐにビジネスパートナーである任天堂に話を持って行き、商品化に向けての交渉をスタート。任天堂との協業が決まったところで、開発チームのメンバーを増員し、正式プロジェクトへの昇格を決定した。

10.プログラミングで白黒つける!

モノクロの世界にするうえで、ひとつ問題があった。キャラクターをゲーム機で表示すると、アップでは線が太く見え、動いたときには線がボヤけてしまうのだ。カラーでは色が馴染んで気にならない程度のボケでも、白黒でパキっと描いた世界では誤魔化しがきかない。どんな状況でも線をくっきりさせるにはドットバイドット方式が有効だが、ポリゴンで作ったキャラクターにドット単位で対応するには、細やかで高い技術力が必要となる。「ここは絶対に妥協したくない!」プログラマーのノズエは一心に取り組み、これを実現した。

ドットバイドット方式を採用し、どんな状況でも線をくっきり表示!

11.生音?デジタル?ハコボーイらしいのはどっちだ?

ここまで生音をメインに制作を進めてきたサウンドだったが、モノクロ&ドットバイドットのゲーム世界ができてくると、ムカエは「何か違う・・・」と感じるようになり、それを率直にサウンドクリエイターのイシカワに伝えた。確かに、要素をそぎ落とし、パキッとした世界を目指しているのなら、サウンドも違う表現が合うはず。イシカワはここまでの路線を潔く捨て、新たな音作りを開始。試行錯誤の末、デジタルな世界を感じさせながらも、どこか温かみがあって耳に残る、ハコボーイらしいサウンドが生まれた。

「ステージその1」のサウンドを聴く
上:最初のサウンド
下:正式採用されたサウンド

「ワールドマップ」のサウンドを聴く
上:最初のサウンド
下:正式採用されたサウンド

12.もっと驚かせたい、笑わせたい!

基本の遊びはできた。でも、もっとハコボーイならではの遊びを入れたいところ。ムカエから、「 主人公をコスプレさせたい」と相談を受けたデザイナーのオオタは、すぐにデザインに取り掛かった。
主人公がハコなだけに制限はありながらも、このゲームで遊んだ人を「え!こんなのも?!」と驚かせたい、笑わせたい。オオタは50案以上描いたアイディアスケッチのうち20案を提案し、最終的に10案が採用された。

13.どんな名前がいいだろう?

ゲーム開発と並行して、タイトル案の検討も進められ、開発チームのメンバーや、キャラクタープロデュースを担当するブランドマネジメント課などから様々な案が出された。タイトルはゲームの印象を決め、売り上げにも影響する重大な要素。関係者間で慎重に検討が行われた結果、企画当初からのタイトル案に「!」がついた、『ハコボーイ!』が正式タイトルに決定した。

14.ギリギリまで詰め込みたい!

開発はいよいよ追い込みを迎え、社内の品質管理チームによるデバッグも本格化していたが、ムカエはまだ新しいことを考えていた。次のステージに進みたくなる、もうひとひねりがほしい。そうだ、合間に仲間が登場するちょっとしたストーリーがあるのはどうだろう?開発終盤の今、こんな仕様追加は難しいことは分かっていたが、他のメンバーに伝えると、「それいいね!やろう!」と二つ返事。バグ(不具合)修正を進める傍らで、みんなで時間を工面して作業を進めていった。

15.頑張った分だけ、喜びは大きいのだ

ストーリーも無事に実装され、メンバーはバグ修正に集中!特にプログラマー陣はかなりの忙しさに見舞われながらも、品質管理チームから報告されるバグを着実に修正していった。そして、ついに・・・。
「ロムアップ(完成)です!」
プロジェクトマネージャーが開発室で高らかに宣言すると、メンバーは立ち上がって拍手喝采!誰もが達成感に満ち、輝くばかりの笑顔だった。今日は祝杯だ!

16.アイアム「キュービィ」 from 『BOXBOY!』

完成したときの熱さのまま、すぐに海外版の制作が始まった。海外では、“ハコ”という音が良い意味ではないエリアがあったため、海外版タイトルは『BOXBOY!』、主人公の名前は世界共通で「キュービィ(Qbby)」とすることになった。同じように、ゲーム中のメニュー画面やチュートリアルなどの言葉やアイコンも、言語や文化に合わせて変更。外国語は間違いに気づきにくいため、慎重に制作を進めていった。

17.もっと愛されるキャラクターになるために

なんと、ここで「キュービィの魅力をゲームにもっと入れたい」という、プロデュース側からの要望が飛び出した!完成させたゲームに仕様を追加するのは異例中の異例。バグが入り込む危険を避けながら、今からできることは何か・・・みんなが頭を悩ますその時、プログラマーのノズエが言った。
「クリアダンスのバリエーションが増やせます。もう用意できていますよ!」
開発中に要望が出てもいいようにと、ノズエは先回りして用意していたのだ。キュービィの表情豊かなクリアダンスに、プロデュース側からもすぐにGOが出て、急ピッチで作業が進められた。

18.世界に羽ばたけ『ハコボーイ!』

2015年1月14日深夜、「ニンテンドーダイレクト」において、ニンテンドー3DSダウンロードソフト『ハコボーイ!』が発表された。自分たちのゲームが、視聴者にどう受け取られるか――。メンバーは自宅で固唾を呑んで見守った。
番組終了直後、日付が15日に変わったところで『ハコボーイ!』の販売開始。同時に公式サイトも公開されると、ネット上にはたくさんのうれしいコメントが並ぶ。やったー!!!大きな喜びと達成感を感じながらも、メンバーはいそいそとベッドに向かった。そう、明日も会社がある。楽しさを追求する道は、まだまだ続いていくのだ!